関東地方で古くから親しまれた野菜で、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県といった東京近郊が多いが、現在では大阪や福岡などの都市近郊でも盛んに生産されている。耐寒性が強く、旬は冬であるが、周年栽培されている。最近は、農薬だけに頼らない病害虫防除や安定生産のため、夏と冬を中心に無加温ハウスでの栽培も増えている。東京では、栽培の始まった江戸川区以外でも
葛飾区、
足立区、
八王子市、
武蔵村山市、
町田市、
府中市、
立川市など、生産の盛んな地域が多い。市場出荷のほか、
農産物直売所での販売も増えている。収穫までの栽培日数は、秋冬まきは80〜90日かかるが、夏は20数日ほどと短い。
コマツナは江戸時代なかばまでは「
葛西菜」とよばれていた。『大和本草』には「葛西菘(かさいな)は長くして蘿蔔(だいこん)に似たり」とあり、『続江戸砂子』では、菜葉好きが全国の菜葉を取り寄せたが「葛西菜にまされるはなし」と高く評価した。葛西菜が品種改良ののち小松菜になるが、『本草図譜』には描かれた葛西菜は現在の丸い葉のコマツナとは異なる。青葉高によれば小松川の
椀屋久兵衛(1651年 - 1676年)が葛西菜をコマツナに改良したというが、『江戸川区史』によれば椀屋久兵衛が評判の高かった葛西菜をわざわざ江戸から上方に取り寄せて人に振る舞ったという。椀屋久兵衛とは、数々の豪遊のあまり身を持ち崩し、
浮世草子『椀久一世の物語』にもなった上方の豪商である。
葛西菜が小松菜と改称された理由の一つに、江戸市中の糞尿を持ち帰って下肥とし、野菜を江戸に運んだ葛西船(かさいぶね)の存在を挙げる向きもある。葛西船の異称として単に葛西と呼ばれていた。当時のイメージとして屎尿臭を連想させる葛西の語を嫌って、めでたい常盤の松にあやかった小松の名を採ったとする。