この物語の主人公である
五位(
位階の一つ。名前は明かされていない)は、だらしのない格好をした
侍である。彼は、周囲の人々からも酷い仕打ちを受けていた。しかし、彼は怒りもせず、「いけぬのう、お身たちは」と言うだけであった。そんな彼は、とある
夢を抱いていた。それは、芋粥(
山芋を
甘葛の汁で煮た
粥)を飽きるほど食べたい、というものだった。その望みを聞いて、
藤原利仁という人物が、その夢を叶えてあげることになった。しかし、実際に大量の芋粥を目にして、五位は食欲が失せてしまうのであった。
この短篇のベースとされている今昔物語集のエピソード(巻26第17話「利仁の将軍若き時京より敦賀に五位を将(い)て行(ゆ)きたる語(こと)」)は、地方豪族である藤原利仁(実在の人物)が、いかに下級官人の「五位」を翻弄しつつその権勢を見せつけたか、に重点がおかれており、近代的に解釈された五位の精神的自由を叙述の中心とする芥川の短篇とは、当然のことながら大きく異なっている。